2023.06.30
渡り鳥の保護は地球全体の生態系保全の観点から重要です。そのため、ラムサールという国際条約が制定されました。現在、渡り鳥の保護に関する研究は盛んに行われていますが、渡り鳥が集団的に利用する湿地のcarrying capacityという視点からの研究は不十分です。今まで、渡り鳥集団飛来による栄養塩負荷の研究は、陸地起源の栄養塩負荷の研究と比べれば、非常に限られている状態と言えます。現在、日本のラムサール条約登録湿地は46箇所あります。その中、渡り鳥が万単位で飛来し、越冬する湿地が少ないわけではありません。例えば、新潟にある佐潟では、毎年1万羽以上の渡り鳥が越冬しに来ます。渡り鳥保全の重要性は言うまでもありませんが、大量の鳥が一箇所に集まれば鳥の糞が閉鎖水域の栄養塩循環に影響を与えかねません。特に日本の湿地の規模が小さくて、その水質は渡り鳥の集団利用による影響を受けやすいと考えられます。したがって、 日本の湿地の持続的な利用にあたって、環境容量を定量的に把握することがひとつ重要な課題です。私の研究室は、渡り鳥による負荷と湿地環境容量を定式化し、湿地管理に活かせることに取り組んでいます。
佐潟において、渡り鳥の影響を考慮した湿地環境容量評価の定式化を開発した上、実用的な評価指標を提案しました。
渡り鳥の影響を考慮した湿地の環境容量の汎用推定法を構築し、湿地保全と地域計画の統合を図ります。
ハードウェア:多項目水質計
ソフト的な設備:湖流シミュレーションモデル、渡り鳥による栄養塩負荷推定モデル、水質予測モデル
自治体の環境計画の手伝い、環境コンサルタントとの連携
Carrying capacity of wetlands for massive migratory waterfowl, Hydrobiologia, Vol. 697, 5-14, 2012.
「渡り鳥集団飛来による閉鎖水域への栄養塩負荷推定に関する研究」土木学会論文集B,Vol.63,No.3, 249-254, 2007.