2023.06.30
地球環境学研究科 / 地球環境学専攻
まくどなるど あん 教授
環境史は1970年に確立し、天然資源を枯渇させ、環境を悪化させるという歴史家の懸念から生じた学問です。長い年月をかけて人間社会と自然環境との間の共生関係を分析することにより、歴史家は、現在の環境問題および将来における維持可能性の課題を解決するために、他の学術分野と協力することが必要であると認識するようになりました。この学問では、環境がどのように人間の歴史を形成するのか、人間はどのように彼らが住む世界において自然環境を形成し変更させるのかという包括的な問題を問うことが研究課題です。環境歴史学とは、以下の三つの考え方のアプローチが存在します。
1.人間が一方的に自然界を犯してきたという考え方
2.人間と自然界の双方の密接な関係のなかで、お互いに影響しあうという考え方
3.人間社会が自然界に与える悪影響について論じるべきだという考え方
本研究は、環境史の視点から、漁村における資源管理の慣行を調査します。魚付林(うおつきりん)は、昔から漁業者が保護してきた魚の養殖の森林であり、海から陸までの広範な領域に及ぶ海洋資源の利用・保存・管理に関する人為的活動を統合するものです。本研究では、以下の三つのことを明らかにすることを目的としています。
1.海洋食物の生産ならびに資源の再生に対して、海洋資源の保存・管理の慣行として、魚付林を調査すること
2.徳川時代から行われてきた陸と海をつなぐ総合的な資源管理をどのように活用してきたのか、また現存する魚付林はどのような形で残されているのか
3.魚付林の再生のために、どのような政策提言ができるか
文献・フィールド調査(三重県・尾鷲、宮城県・唐桑半島、岩手県・重茂半島、青森県・男鹿半島)
上記について関心のある行政(地方自治体含む)の方
あん・まくどなるど『環境史学入門』清水弘文堂書房 2006年