政策立案を通じた気候変動への対応策:漁村の適合力向上

法律・政策 サスティナビリティー
キーワード
まくどなるど あん

地球環境学研究科 / 地球環境学専攻

まくどなるど あん 教授

概要

 本研究は、北西アジア海域における石川県・舳倉島の海女さんに対するフィールド・インタビューを中心とする研究です。1999年以降、環境省の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の政府レビュー・チームメンバーとして気候政策に携わり、気候変動における悪影響について取り組むために地域関連の政策を提言することに努め、適応力の構築のために脆弱なコミュニティに働きかけることが、私のこれまでの主な研究活動でした。
 気候変動に関する政府間パネル第4次評価報告書によれば、地球の温暖化は明白であり、それに対する対応には相当の費用が生じるとされています。将来の沿岸システムにおける影響に対しては悲観的な展望が示されており、脆弱性の高い地域に存在する小島が特定されています。また、国際連合食糧農業機関(FAO)の2010年の漁業白書では、「気候変動は漁村コミュニティに悪影響を与えるため、政府は脆弱性を削減し、新たな政策を立案するための漁村コミュニティの能力を向上するために活動する必要がある。」との見解を示しています。

 本研究の目的は、小島の漁村の脆弱性を勘案し、これら漁村に対する政策を立案することにあります。研究方法は、伝統的漁法である海女さんへのインタビューおよび参与観察です。気候変動に対する漁村の適応力の問題を、舳倉島周辺の魚介や海藻の漁獲により生計を立てる海女さんの観察および経験をインタビューすることで明らかにし、また自身も海女さんと同じように海に潜り参与観察を行うことで、研究課題の解決を試みます。気候変動に対する海女さんの伝統的知識および経験的知識を明らかにすることで、気候変動が及ぼす地方レベルおよび地域レベルへの影響についての理解向上を目指し、これまでの科学者、研究者らによるデータなどの科学的証拠を補完するものとして位置付けています。

応用例

日本と海外の小島における漁村の適応力向上

今後の発展性

  • リスク・不確実性を説明する社会的、文化的、制度的視点から気候変動および漁師の間の相互作用に関する理解向上
  • 気候変動・生物多様性管理への政策立案・理解向上のために、科学的知識・伝統的知識を関連させた調査
  • 気候変動の課題における柔軟性、適応力、回復力向上のための環境政策・漁業政策・管理ツール(たとえば、漁村の慣行、在庫補充活動、禁漁区の自主的活動、伝統的入会(いりあい)慣行など)の調査

研究設備

文献資料、スキューバダイビングセット一式、聞き取り調査道具一式(テープレコーダー等)

共同研究・外部機関との連携への期待

海に潜り海洋変化を研究している科学者・漁業者

関連特許・論文等

http://www.cbd.int/doc/publications/cbd-ts-61-en.pdf 
McDonald, A., The Ama-san of Hegura Island: Carrying on the traditions of her ancestors- over 1,400 years of community-based resource management, CBD Technical Series No. 61 Biological and Cultural Diversity in Coastal Communities: Exploring the Potential of Satoumi for Implementing the Ecosystem Approach in the Japanese Archipelago, published by the Secretariat of the UN Convention on Biological Diversity, May 2012, page 46-53.

シェアする