概要

天然物化学は、自然界に存在する生物活性有機化合物（天然有機化合物）に関する研究を行う学問領域です。天然有機化合物は地球誕生以来、自然淘汰に勝ち残ってきた物質であるため、その構造は極めて複雑で、非常に強力な生物活性を有しています。未知化合物の探索や、合成化学的にチャレンジングな特異的構造など、多くの科学者の興味を惹きつけてきました。そしてそれらの先進的研究は、新しい医薬品、農薬、香料等の開拓や創製に大きく寄与してきました。当研究室では、天然物化学やケミカルメディシンに関連する様々な研究プロジェクトを展開しています。

応用例

• 植物葉に含まれる生物活性天然有機化合物の大量かつ安価な抽出法の開発
• 弾性線維エラスチン架橋アミノ酸の定量分析によるバイオマーカー診断法の確立
• 生物活性天然有機化合物の全合成研究

今後の発展性

天然物化学を基盤として、新薬の開発や生活習慣病の診断薬の開発、天然有機化合物の全
合成研究、環境調和型溶媒を用いた天然からの有用成分獲得法の確立等への発展が期待さ
れる。

研究設備

赤外分光装置（日本分光）、高速液体クロマトグラフ装置（日本分光、島津製作所）、旋
光計装置（日本分光）、紫外可視分光装置（日本分光）、液体クロマトグラフ－タンデム
質量分析装置（島津製作所）、ロータリーエバポレーター（ヤマト科学）、コンビニエバ
ポ（バイオクロマト）、ガスクロマトグラフ－質量分析装置（島津製作所、共通機器）、
核磁気共鳴装置（日本電子、共通機器）、質量分析装置（日本電子、共通機器）

共同研究・外部機関との連携への期待

• 植物葉に含まれる天然有機化合物の高効率的獲得法の確立
• エラスチン分解をともなう疾患のバイオマーカーによる新規診断法の確立
• コラーゲン架橋アミノ酸に関する研究

関連特許・論文等

「デスモシンおよびイソデスモシンの製造方法」　特許7020669
「テルペン類の抽出方法」　特許6981644

Akane Yamagishi, Yuki Egoshi, Makoto T. Fujiwara, Noriyuki Suzuki, Tohru
Taniguchi, Ryuuichi D. Itoh, Yumiko Suzuki, Yoshiro Masuyama, Kenji Monde,
Toyonobu Usuki “Total Synthesis, Absolute Configuration, and Phytotoxic Activity
of Foeniculoxin” Chemistry – A European Journal 2023, 29, e202203396.

Mika Hirose, Toyoaki Kobayashi, Nao Tanaka, Ayame Mikagi, Hiroshi Wachi, Yuki
Mizutani, Toyonobu Usuki “IsoChichibabin Desmosine-13C3,15N1 Synthesis and
Quantitative LC-MS/MS Analysis of Desmosine and Isodesmosine in Human
Skin” Bioorganic & Medicinal Chemistry 2021, 52, 116519.

Tenma Nakamura, Dinda B. Pitna, Kogaku Kimura, Yukiko Yoshimoto, Tomoya
Uchiyama, Takaya Mori, Ryosuke Kondo, Shihori Hara, Yuki Egoshi, Shoya
Yamaguchi, Noriyuki Suzuki, Yumiko Suzuki, Toyonobu Usuki “Total Synthesis of
Cynaropicrin” Organic & Biomolecular Chemistry 2021, 19, 6038-6044.

Nao Tanaka, Manami Kurita, Yuko Murakami, Toyonobu Usuki “Chichibabin and
IsoChichibabin Pyridinium Syntheses of Isodesmosine, Desmosine, and their
Derivatives” European Journal of Organic Chemistry 2018, 21, 6002-6009.

Usuki, T. Yasuda, N. Yoshizawa-Fujita, M. Rikukawa, M. “Extraction and Isolation
of Shikimic Acid from Ginkgo Biloba Leaves Utilizing an Ionic Liquid that
Dissolves Cellulose” Chem. Commun, 2011, 47, 10560-10562.