選択的にヌクレオチドを分解する酵素、MP67に関する研究

ライフサイエンス 医療・医用
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神澤 信行

理工学部 / 物質生命理工学科

神澤 信行 教授

概要

多くの生命活動にはヌクレオチドが関与しています。よく知られる例では、筋肉の運動にヌクレオチドのひとつであるATP(Adenosine Triphosphate)のエネルギーが使用されています。また、私たちの遺伝物質であるDNA(Deoxyribo Nucleic Acid)の構成成分としてもヌクレオチドは重要です。動植物は何らかの方法で、このヌクレオチドの量を調節し、様々な生命現象の調節に役立てているものと思われます。動植物に共通して存在するアピラーゼもヌクレオチド量を調節する因子のひとつと考えられています。植物アピラーゼは図に示すように、細胞周囲のリン酸量を調節するものと、マメ科に特異的に存在し、根粒の形成に関与するものがあることが知られています。最近私たちは、オジギソウからおなじアピラーゼに分類されるものの、既知のグループに属さない新奇アピラーゼ(MP67)を見つけ出しました。通常のアピラーゼはほぼ全てのヌクレオチドを無作為的に分解する事ができるのに対し、MP67のADP(Adenosine diphosphate)分解速度はATPの分解速度のおよそ100倍となり、ヌクレオチド選択的な分解様式を示す事がわかっています。最近の分子遺伝学的な手法と組み合わせることで、この似て非なるものの発見は、様々な応用の可能性を提示してくれます。

応用例

現時点では、応用例はありませんが、下記に示す様な発展が考えられます。

今後の発展性

ADP選択的な分解は、高い血液凝固防止因子としての応用が考えられます。具体的には、血栓形成を抑制する薬剤としての利用や、人工臓器、人工血管への技術応用が考えられます。また、リン酸化検出キットなど、背景にあるヌクレオチドの前処理剤として、主に医療分野の検査薬などへの応用が考えられ、QOLの向上に貢献します。
また、アピラーゼはマメ科植物の根粒形成にも関与する事から、遺伝子改変により窒素取り込みの高い植物が作出出来れば、食糧問題の解決に貢献できると考えています。

研究設備

紫外・可視分光装置、HPLC(High Performance Liquid Chromatography)、DNA解析装置 等々

共同研究・外部機関との連携への期待

特に、医療分野への応用が期待されるため、製薬関連企業との共同開発を期待しています。

関連特許・論文等

Purification and biochemical characterization of a novel ecto-apyrase, MP67 from Mimosa pudica. Riku Okuhata, Takeshi Takishima, Naoaki Nishimura, Shogo Ueda, Takahide Tsuchiya, Nobuyuki Kanzawa. Plant Physiol 157: 464-475(2011.9)

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