化学分析に基づく環境モニタリングと環境評価

環境保全・浄化
キーワード

理工学部 / 物質生命理工学科

木川田 喜一 教授

概要

 水質、土壌、大気環境に関わる現地調査と試料採取、ならびにその化学分析を通じて、環境負荷物質の検出からその起源同定と拡散プロセスの解析に至るまでの総合的な環境評価や、地域的および広域的な物質輸送・循環モデルの構築を行っています。
 当該研究においては、環境試料の採取から分析までを一貫して行うことで総合的な環境評価が可能です。化学分析においては、高度な湿式化学分析技術と機器分析を組み合わせることにより、岩石、難溶性鉱物、土壌などの固体試料から地下水、河川水、さらには海水などの高塩濃度の液体試料まで、あらゆる種類の環境試料の微量分析に対応します。例えばヒ素、セレンや鉛、カドミウムなどの有害元素や、希土類元素やウラン、トリウムなどの地質学的に興味を持たれる元素について、サブppbレベルでの定量が可能です。また、同位体組成分析を加えることで、特定物質の起源や、その移動プロセスの評価も可能となります。

応用例

  • 草津白根火山の火口湖、温泉水の長期的水質変動から、火山活動のモニタリングを行うとともに、火山熱水系のモデル化を行いました。
  • 吾妻川中流域の総合的な環境評価を通じて、当該地域の酸性河川中和事業による環境への影響と、流域の河川環境を定量的に評価しました。
  • 日本国内の大気降下物試料に含まれるウランの同位体組成の経年・季節変化から、中国の核実験が国内大気環境に与える影響を評価するとともに、核実験残渣の対流圏・成層圏輸送を検証しました。
  • 国内エアロゾルのストロンチウムおよび鉛同位体比から、大陸起源物質の対流圏輸送経路を検証しました。

今後の発展性

  • 化学種分析に基づく高感度、高確度な分析手法を新規開発し、より実態に即した環境評価を目指します。
  • 環境中の物質移動・循環モデルの構築に利用可能な新たな指標元素・指標同位体対を見出し、その分析手法を確立することで、より信頼性の高い環境評価手法の提案を目指します。

研究設備

可視・紫外分光装置、イオンクロマトグラフ、原子吸光分光分析装置、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析装置、ICP質量分析装置、湿式化学分析設備一式、ハンドコアラ-(土壌採取器)、バンドーン採水器、エクマンバージ採泥器、ハイボリュームエアサンプラー

共同研究・外部機関との連携への期待

分析機器関連あるいは環境分析関連企業と共同での、微量元素や重元素の同位体比測定を目的とした試料分解処理から分離抽出・分析・定量までをパッケージとした新規分析手法ならびに関連装置の開発。またその応用としての、環境コンサルタントや環境評価シンクタンクと共同での新奇環境評価技術の開発。

関連特許・論文等

Kikawada, Y., Oda, K., Nomura, M., Honda, T., Oi, T., Hirose, K., Igarashi, Y., “Origin of enriched uranium contained in Japanese atmospheric deposits”, Natural Science, 2012, vol.4, 936-942.
木川田喜一、”草津白根火山地域の河川水質と温泉水・鉱山排水との関係”、 地下水技術、 2011, vol.53, No.2, 25-37.

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