概要

地球温暖化の原因物質である二酸化炭素の排出は，発電所や工場と並んで自動車に起因するところが大きい．自動車による二酸化炭素の排出低減に関して様々な対策技術が提案されているなか，短中期的にに実現可能な現実的手段として，スーパーリーンバーンエンジンの開発が現在盛んに行われている．
　
スーパーリーンバーンエンジンは低燃費と低エミッションの両立が可能であるが，燃料希薄で燃焼させるため，点火後の安定した火炎伝播が難しいことが重要な課題の一つとなっている．この対策として宮元等は，ガソリンにニトロメタンを少量添加すると希薄側の可燃限界が広がり，燃焼途中での消炎が防げると報告している．しかし，ニトロメタンはガソリン自着火を促進する作用をもつため，ノッキングを起こしやすくなる．これを回避するために，フランのような植物由来の高オクタン成分を複合添加している．
　
我々はこれまでに高圧衝撃波管を用いてガソリン燃料の着火特性を調べてきた．そして近年，衝撃波管の高圧部を増設することにより，加熱持続時間を従来の3倍である33 msに延ばすことに成功し，より低温領域での着火特性評価が可能となった．このように改良した高圧衝撃波管を用いて，ガソリンサロゲートにニトロメタン，フラン，およびこれらを複合添加したときの自着火への影響を幅広い温度領域で調べ，各々の添加成分の化学的役割について検討を行った．その結果をもとに，スーパーリーンバーンエンジンに適した燃料設計について考察をした．