2023.07.18
私たち人間や動物と違い、植物は動くことができません。すなわち、植物は過酷な環境(環境ストレス)から逃げることができず、それに適応する必要があります。植物の環境ストレスへの適応は、様々な遺伝子、タンパク質及び代謝物質などのネットワークにより制御されており、これらの複雑なメカニズムを解明することが、作物の環境ストレス耐性の向上並びに収量の増加のために重要になると考えられています。
私たちの研究室では、特に、植物の熱ストレスや砂漠化した環境への応答を制御する分子生物学的なメカニズムの解明をめざし、研究を進めています。さらに、自然界では植物は一つのストレスのみならず、複数のストレスから同時に影響を受けています。このような複数のストレスが組み合わさった環境に対する植物の反応に関しても研究を進めています。
熱ストレスにより活性化されるシグナル
作物の品種改良、または栽培技術の開発
私たちの研究から得られた成果を利用することにより、作物のストレス耐性を効率よく向上させることができると考えられます。特に熱ストレスに関する研究は、地球温暖化による作物収量の減少を食い止めるために役立つと期待できます。さらに今後、アメリカ、イスラエル等、海外の大学との共同研究を進めていきます。
人工気象器、サーマルサイクラー、電導率計 等
農業、種苗系の企業との連携を期待します。
・Suzuki et al (2013) Temporal-spatial interaction between ROS and ABA controls rapid systemic acclimation in plants. Plant Cell. 25:3553-3569.
・Suzuki et al (2016) ABA Is Required for Plant Acclimation to a Combination of Salt and Heat Stress. PLoS One.11(1):e0147625.
・Katano et al (2018) Differences between seedlings and flowers in anti-ROS based heat responses of Arabidopsis plants deficient in cyclic nucleotide gated channel 2. Plant Physiol Biochem. 123:288-296.
・Kumazaki and Suzuki (2019)Enhanced tolerance to a combination of heat stress and drought in Arabidopsis plants deficient in ICS1 is associated with modulation of photosynthetic reaction center proteins. Physiol Plant. 165(2):232-246.