2023.07.20
現在使われているメモリーは、多くの場合、強誘電性あるいは強磁性のどちらか一方を利用して情報の記録を行っています。強磁性強誘電体は強誘電性と強磁性を併せ持つ物質で、これをメモリー素子として用いれば原理上非常に多くの情報を記憶することができます(多値メモリー)。しかし、従来から知られているマルチフェロイック物質は、マイナス130℃以下の低い温度でしか強誘電性と強磁性を同時に示しません。そのため、メモリーやセンサーなどとして実用化するために、室温で動作する強磁性強誘電体の開発が望まれていました。
我々は、原子レベルで平坦なチタン酸ストロンチウム(111)の面に、レーザーアブレーション法で鉄酸ビスマスとクロム酸ビスマスを1原子層ずつ交互に堆積させて2種類の物質からなる超格子を作製し、それが室温で強誘電性と強磁性を併せ持つことを明らかにしました。
多値メモリーだけでなく、強磁性と強誘電性が同じ物質の中で相互作用する電気磁気効果を利用した全く新しいデバイスの実現などにつながるものと期待されます。
今回開発した強磁性強誘電性人工超格子が電気磁気効果を示すかどうかは現時点では不明です。もしこれが電気磁気効果を示し、それによって磁化を電場で駆動したり電気分極を磁場で制御したりすることができれば、電場で制御できる高速・低消費電力のMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)やスピンバルブ、磁気光学効果材料などのさまざまな方面への応用が期待できます。
レーザーアブレーション装置
多値メモリー、電場で駆動する磁気メモリー(ハードディスク)の開発
ご興味のある企業は上記連絡先までご連絡ください。
特願2007-130252、坂間弘、 市川能也、中村振一郎、常温磁性強誘電性超格子およびその製造方法、出願日平成19年5月16日
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