InP基板上II-VI族半導体の材料開発とデバイス応用

装置・デバイス ナノテクノロジー マテリアル・リサイクル
9:産業と技術革新の基盤をつくろう
キーワード
野村 一郎

理工学部 / 機能創造理工学科

野村 一郎 教授

概要

 分子線エピタキシー法を用いてInP基板上にMgZnCdSeやBeZnSeTeといったⅡ-Ⅵ族半導体結晶を作製し、緑色~黄色域で発光する半導体レーザ/発光ダイオードの研究開発を行っています。これらの材料はInP基板に格子整合するため高品質な結晶が得られ、更に可視域から紫外域に対応する禁制帯幅を有することから緑色~黄色域の発光(活性層)材料やクラッド層材料として有望です。これまで、図のようにBeZnSeTeを活性層、MgSe/ZnCdSe超格子をnクラッド層、MgSe/BeZnTe超格子をpクラッド層に用いたデバイスを作製し、電流注入による発光を得ました。また、従来Ⅱ-Ⅵ族デバイスにおいて問題となっていた素子寿命も大幅に改善され、高い信頼性を有していることが示されました。一方、これら材料を組み合わせることで大きなヘテロ障壁が得られることが見出され、共鳴トンネルダイオードやサブバンド間遷移デバイス等への応用も期待されます。このように、上記材料は広い波長域をカバーする光デバイスや電子デバイスへの展開も予想され、多くの可能性を秘めていると言えます。

InP基板上Ⅱ-Ⅵ族半導体発光デバイスの構造
発光の様子

応用例

緑色及び黄色半導体レーザは半導体レーザプロジェクターに応用でき、超小型、低消費電力、高精細な次世代ディスプレーの基幹部品として期待されます。他にも、網膜治療等の医療応用、遺伝子解析等のバイオ応用にも期待されます。

今後の発展性

緑色及び黄色半導体レーザの実現を目指すことに加え、当該材料の可能性をより深く探索することで巨大ヘテロ障壁を応用した共鳴トンネルダイオードやサブバンド間遷移デバイス、更には太陽電池等への応用展開が期待されます。

研究設備

分子線エピタキシー装置、X線回折測定装置、フォトルミネッセンス測定装置、電気特性評価装置、光露光装置、電子線描画装置、ドライエッチング装置、集束イオンビーム装置、他

共同研究・外部機関との連携への期待

緑色、黄色半導体レーザの開発、共鳴トンネルダイオード、サブバンド間遷移デバイスの研究、太陽電池の研究、Ⅱ-Ⅵ族半導体の材料開拓

関連特許・論文等

I. Nomura et al, “Photopumped green lasing on BeZnSeTe double heterostructures grown on InP substrates,” APL , Vol. 94, 2009, 021104.
I. Nomura et al, “Photopumped lasing characteristics in green-to-yellow range for BeZnSeTe II-VI compound quaternary double heterostructures grown on InP substrates,” JJAP, Vol. 50, 2011, pp. 031201-1-8.

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