概要
音声コミュニケーションに関わる一連の事象は「ことばの鎖(Speech Chain)」と呼ばれ、音声科学・聴覚科学における基本的な概念となっています。本研究では、音声コミュニケーションに関係する研究に焦点を当て、次のような幅の広い学際的な分野をカバーします:
1)音響学と音響教育 2)音響音声学を中心とする言語学分野(音声学・音韻論)とその教育応用(応用言語) 3)音声生成を含む音声科学と音声知覚を含む聴覚科学、音や音声を含む認知科学 4)実環境での音声知覚・音声明瞭度、音声信号処理・音声強調 5)音声に関する福祉工学・障害者支援、障害音声の音響分析や聴覚障害者・高齢者の音声生成や音声知覚 6)実時間信号処理を含む音声処理アルゴリズムの開発、音に関わるシステムやアプリの開発 7)音声の話者性 8)その他、音に関する研究全般
応用例:「響きが多い室内で音声明瞭性低下を防ぐ技術」 ・話し手からの音声を拾う/予め録音された音声 → 処理 ・処理後の音声を拡声→明瞭性が向上する技術を研究中
応用例
雑音や残響環境下での音声の明瞭性を改善します。
お年寄りや障害者のために聞きやすい音声を追求します。
話し声を聞きづらくするスピーチプライバシーのためのマスキング技術について開発します。
人間はどのように「ただの音」から「音声」を区別して聞いているかを解明し、言語教育への応用を考えます。
ある言語の発音や聞き取りが外国人とネーティブでどう違うかを調べ、言語教育への応用を考えます。
人間の発音を再現できる模型を開発し、発音教育などへの応用を考えます。
今後の発展性
音声生成や音声知覚のメカニズムをより詳細に調べ、工学応用のみならず、臨床応用、障害者支援や教育応用など、より広い視野での展開を目指します。
研究設備
簡易式防音室
録音・再生音響装置、簡易式立体音響システム、12面体無指向性スピーカ、ダミーヘッドなど
オーディオメータ、簡易式聴覚フィルタ測定装置、人工耳、騒音計など
計算機環境、シミュレーション・ソフトウェアなど
共同研究・外部機関との連携への期待
聞きやすい音声を提供する新しい音声処理アルゴリズムの開発、音声を聞きづらくする新しい雑音の開発
外国語の発音や聞き取りのための新しい教材開発
発音を分かりやすく実演できる新しい声道模型の開発
言語障害による音声の分析、聴覚障害による聞こえの調査・支援
関連特許・論文等
「音声処理装置」特願H11-274991
「オーディオ信号への付加データ埋め込み装置及びオーディオ信号からの付加データ再生装置」特願2000-367429
「音声処理方法と装置及びプログラム」特願2004-11111
「音声信号処理方法、装置及びプログラム」特願2005-251233
「声道模型及びこれを用いた音声生成模型」特願2006-296936
T. Arai, “Education system in acoustics of speech production using physical models of the human vocal tract,” Acoustical Science and Technology, vol. 28, no. 3, pp. 190-201, 2007.