部分因子環の代数的組合せ構造とその応用

情報・通信 基礎・理論
キーワード

理工学部 / 情報理工学科

後藤 聡史 助教

概要

 作用素環論における部分因子環(subfactor)のJones indexの理論に対して、ある種の量子化されたガロア群の類似として、Ocneanuにより導入された「paragroup」と呼ばれる代数的組合せ構造をもつ不変量の構造やその応用について主として研究しています。
 Paragroupは、テンソル圏にいくつかの構造が付加されたものと考えられ、量子群とは違った意味で群の概念の量子化になっています。
 また一方でparagroupは、グラフ上にconnectionと呼ばれる統計物理学のある種の可解格子模型におけるBoltzmann weightのようなものを与えた組合せ構造をもつものとしても定式化できます。
 このparagroup理論は数学・数理物理学の多くの他の分野、特に、量子群、可解格子模型、位相的場の理論、共形場理論などと、「テンソル圏」という共通の構造を通して、深く関係していることが明らかにされ、近年ますます重要な研究対象となっています。
 最近は部分因子環(subfactor)から生ずるテンソル圏、グラフ、分岐則代数、paragroupといった代数的組合せ構造をより詳しく調べ、指数(index)の小さいsubfactorの存在可能性と分類、可解格子模型や位相的場の理論、共形場理論等への応用について研究を行っています。

応用例

OcneanuによるA-D-E型 Dynkin図形上のconnectionの完全分類の応用として、計算が困難であったGoodman-de la Harpe-Jones subfactorの分岐則の計算や中間部分因子環の存在などの結果が得られますが、この計算で用いたグラフの合成と分解による分岐則の計算方法は、A-D-E型に限らない多くの例に適用可能であるため、現在さらなる応用例の計算を行っています。

今後の発展性

計算機等を用いて多くの具体例を計算することにより、指数(index)の小さいsubfactorの存在可能性や分類、可解格子模型や位相的場の理論、共形場理論等への応用等について、新たな事実や現象が発見されることが期待されます。

研究設備

Mathematica等 数学ソフトウェアを利用するための計算機機器類

共同研究・外部機関との連携への期待

  • 計算機ソフトウェアにより、より多くのより複雑な例が計算できるようなプログラム等の開発
  • 離散アルゴリズムや組合せ最適化の手法を利用し、グラフの合成・分解などを高速に計算する計算法の開発

関連特許・論文等

  • S.Goto, “On Ocneanu’s theory of double triangle algebras for subfactors and classification of irreducible connections on the Dynkin diagrams”, Expo. Math., 28, (2010), 218-253.
  • S.Goto, “On the fusion algebras of bimodules arising from Goodman-de la Harpe-Jones subfactors”, J. Math. Sci. Univ. Tokyo, 19, (2012), 409–506.
  • S.Goto,“Mixed quantum double construction of subfactors”,Tokyo J. Math. 39 (2017), 597–617.

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