Galois理論的に顕著な性質を持つ多項式族の構成とその代数的整数論への応用

情報・通信 基礎・理論
キーワード
角皆 宏

理工学部 / 情報理工学科

角皆 宏 教授

概要

 Galois理論的に顕著な性質を持つ多項式族の構成とその代数的整数論への応用に向けて、具体的計算的な研究を行っています。特に、「複比型Noether問題」の計算的研究やそれを用いた生成的多項式の構成が中心的な課題です。n標点付き射影直線のモジュライ空間M0,nの関数体Kは座標関数の複比達で生成される(n-3)変数の有理関数体であり、そこには標点の置換で自然にn次対称群Snが作用します。Snの様々な(主に推移的な)部分群Hに対し、Hによる固定体KHが有理的であるかどうかを問うのが「複比型Noether問題」です。これが肯定的であるとき、この状況からHに関する(n-3)助変数の生成的多項式が得られます。

生成的多項式の構成法は色々ありますが、この方法は幾何的な由来が明解である上、得られる多項式の特徴として、

  • 根への作用が明解
  • 係数や判別式が簡明になり易い

などの傾向があり、有力な方法です。特に、「係数が助変数について整数係数の多項式であってしかも定数項が±1となる」という顕著な性質を持つ多項式(単数族多項式)を得ることもあります。これを利用して、不分岐拡大の構成を行なうことで、類数の可除性問題など代数的整数論への応用にも取り組んでいます。

応用例

代数的整数論の計算に於ける実例提供に応用できます。特に、所定のGalois群を持つ代数体を具体的にたくさん構成することが出来るので、単数群・単数規準の決定や不分岐拡大の構成、またそれを用いた類数の可除性問題に応用できます。このような応用には係数が簡潔な形の多項式であることが重要であり、この手法の利点が活かされます。

今後の発展性

Galois群の構成問題やその応用のため、複比型Noether問題に取り組んできましたが、今後は幾何的な背景のより深い考察や代数的整数論への応用にも取り組んでいきます。

研究設備

計算機上の計算代数ソフトウェアなども活用しながら、研究を進めています。

共同研究・外部機関との連携への期待

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)への出張授業や「女子中高生夏の学校」での実習講師など、高校生に向けた活動実績もあり、高校までの数学教育を見直して「数学を学ぶことで身につくこと」を大切にする活動に参画できればと思っています。

関連特許・論文等

  • Hiroshi Tsunogai, “A construction of an infinite family of dihedral quintic fields with unramified biquadratic extensions”, Algebraic number theory and related topics 2018, 331–-349, RIMS Kôkyûroku Bessatsu, B86, Res. Inst. Math. Sci. (RIMS), Kyoto, 2021.
  • Hiroshi Tsunogai, “Toward Noether’s Problem for the Fields of Cross-ratios”, Tokyo J. Math. 39(3), 901-922 (2017).
  • Ki-ichiro Hashimoto, Hiroshi Tsunogai, “Noether’s problem for transitive permutation groups of degree 6”, Galois-Teichmuller Theory and Arithmetic Geometry (Adv. Stud. Pure Math. 63), 189-220 (2012).
  • Ki-ichiro Hashimoto, Hiroshi Tsunogai, “Generic polynomials over Q with two parameters for the transitive groups of degree five”, Proc. Japan Acad., 79A(2003), 142-145.

シェアする