解析数論と関連分野間の相互関係

基礎・理論
キーワード
中筋 麻貴

理工学部 / 情報理工学科

中筋 麻貴 教授

概要

 ゼータ関数や保型形式、保型表現といった「対称性」を持つ特殊な関数について研究を行っています。これらの関数は解析数論の分野において中心となる関数ですが、本研究では、解析数論からの視点に限らず、様々な分野や理論の視点からその性質について解析を行っています。
(Ⅰ)保型形式および保型表現の研究から導入された「ワイル群多重ディリクレ級数」の性質の解明を行っています。最近の研究から、この級数が組合せ論的表現論(量子群の結晶基底、可解格子模型等)やシューベルトカリキュラス等と関係していることが期待されており、現在は、これを明らかにすることを目的として研究に取り組んでいます。
(Ⅱ)セルバーグゼータ関数の零点について、双曲空間のスペクトルの視点から解析しています。同時に、スペクトルの定量的な分布についての問題(スペクトル問題)にも取り組んでいます。
(III)Euler-Zagier型多重ゼータ関数の拡張として,Schur関数のtableau表示の類似物として定義したSchur型多重ゼータ関数を導入し,その性質について解析しています。

(Ⅰ)と関連する結晶基底

応用例

同一の対象物を通して、保型形式、表現論、組合せ論、量子群、幾何といった様々な分野から研究を行うことにより、理論間および分野間のつながりを明らかにすることができます。本研究から得られる分野間の連結により、各分野における研究対象に他分野からのアプローチ法の導入や意味づけをさせることができます。

今後の発展性

本研究を進めることで、分野間の相互関係をさらに明確にしていきたいと考えています。またこれにより、これまで未解決であった各分野の問題に対して貢献するだけでなく、解決済みの問題に対する別の側面を与えることにも貢献していきたいと考えています。

研究設備

PC

共同研究・外部機関との連携への期待

様々な視点からのアプローチを行っていますので、他分野への展開や応用に興味がある方からのご意見やご提案を希望します。

関連特許・論文等

  • Maki Nakasuji, Wataru Takeda, “Pieri formulas for hook type Schur multiple zeta functions”, Journal of Combinatorial Theory, Series A, Vol.191, Paper No.105642, (2022)
  • Eren Mehmet Kiral, Maki Nakasuji, “Parametrization of Kloosterman sets and SL3-Kloosterman sums”, Advances in Mathematics, Vol.403, Paper No.108392, (2022)
  • Kohl Matsumoto, Maki Nakasuji, “Expressions of Schur multiple zeta-functions of anti-hook type by zeta-functions of root systems”, Publicationes Mathematicae Debrecen, Vol.98(3-4), pp.345-377, (2021)
  • Daniel Bump, Maki Nakasuji, “Casselman’s Basis of Iwahori vectors and Kazhdan-Lusztig polynomials”, Canadian Journal of Mathematics, Vol.71, pp.1351-1366, (2019)
  • Maki Nakasuji, Ouamporn Phuksuwan, Yoshinori Yamasaki, “On Schur multiple zeta functions: A combinatoric generalization of multiple zeta functions”, Advances in Mathematics Vol.333, pp.570-619 (2018)
  • Maki Nakasuji, Hiroshi Naruse, “Yang-Baxter basis of Hecke algebra and Casselman’s problem (extended abstract)”, Discrete Mathematics and Theoretical Computer Science, 935-946, (2016)
  • Daniel Bump, Peter McNamara, Maki Nakasuji, “Factorial Schur functions and the Yang-Baxter equation”, Commentarii Mathematici Universitas Sancti Pauli, Vol.63, no.1-2, pp23-45, (2014)
  • Maki Nakasuji, “Generalized Ramanujan conjecture over general imaginary quadratic fields,” Forum Mathematicum, Vol.24, no1.pp85-98, (2012)
  • Daniel Bump, Maki Nakasuji, “Casselman’s basis of Iwahori vetors and the Bruhat order”, Canadian Journal of Mathematics, Vol.63, pp.1238-1253, (2011)
  • Daniel Bump, Maki Nakasuji, “Integration on p-adic groups and crystal bases”, Proceedings of the American Mathematical Society, Vol.138, pp.1595-1605, (2010)

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