神経細胞の情報伝達に関する薬理学的研究

ライフサイエンス 医療・医用 環境保全・浄化
キーワード
笹川 展幸

理工学研究科 / 理工学専攻

笹川 展幸 教授

概要

 神経終末からのシナプス小胞(SSV:Small Synaptic Vesicle)および分泌細胞からの有芯小胞(LDCV:Large Dense-Core Vesicle)の開口分泌反応では、分泌部位にドックしていた分泌小胞と細胞膜との融合が起こります。 この反応の過程にはシナプス終末や分泌細胞また分泌小胞に局在する種々の蛋白質の相互作用、さらにそれらを制御するカルシウムイオンなどの小分子が必要であると考えられています。更に、分泌反応の全容を理解するためには、少なくとも分泌小胞と細胞膜との融合過程の調節機構と、分泌を維持する分泌小胞の供給過程の両調節機構を明らかにすることが必要です。 単一細胞での開口現象をアンペロメトリー法(微小炭素電極による電気化学的検出)で解析すると共に、分泌小胞の細胞内動態を可視化し時空間的に解析することにより(右図参照)、新規な現象の発見やその機構の解明を目指しています。また、神経系細胞の情報伝達機構に及ぼす新規生物由来の生理活性物質(一酸化窒素とその化合物、他)や毒素(新規ボツリヌス毒DC、他)の作用機序につき検討しています。 それら物質の作用機構の理解を、前記テーマへフィードバックし、相乗効果を期待しています。

図. 副腎髄質クロマフィン細胞の分泌小胞の細胞内動態可視化解析法
蛍光色素により分泌小胞を可視化(左図)し、移動軌跡と距離を解析(右図)

応用例

中枢神経系作用薬、特に抗うつ薬の作用発現の分子機構の理解

今後の発展性

神経系細胞の情報伝達機構に影響をおよぼす各種生理活性物質の新規作用の発見は、中枢神経系疾患の治療法や新規治療薬の開発に発展する可能性があります。

研究設備

細胞培養関連機器、培養室、高速液体クロマトグラフィー、電気化学的検出器、蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡、細胞内微量注入関連機器

共同研究・外部機関との連携への期待

各種生体由来の生理活性物質の新規作用の発見とその作用機構の研究
製薬系企業との神経系に作用する薬物のスクリーニングと新規作用探索等の研究

関連特許・論文等

1) Unique biological activity of botulinum D/C mosaic neurotoxin in murine species. Nakamura K, Kohda T, Shibata Y, Tsukamoto K, Arimitsu H, Hayashi M, Mukamoto M, Sasakawa N, Kozaki S., Infect Immun., :2886-2893, 2012
2) Dissociation of inositol polyphosphates from the C2B domain of synaptotagmine facilitates spontaneous release of catecholamines in adrenal chromaffin cells. A suggestive evidence of a fusion clamp by synaptotagmin. Sasakawa, N., Ohara-Imaizumi, M., Fukuda, M., Kobayama, H., Kumakura, K. Neuropharmacology, 60, 1364-1370, 2011
3) Effects of sodium channel-targeted conotoxins on catecholamine release in adrenal chromaffin cells. Elsie C. Jimenez,  Sasakawa, N., Kumakura, K., Philippine J. Science, 137, 127-132, 2008.

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